新刊案内
美山たそがれメール
野路すみれ 著
四六判並製254ページ 1575円(税込)
「おばちゃんは、いつもすごいですよね。どうしてそんなにパワーがあるのですか?」(本書第2章パソコン格闘記 何に使うの?より)
京都市内から北へ70キロの山間部に、美しい日本の原風景を残す地域として知られる美山町があります。かやぶきの家並で有名なスポットからさらに奥まったところの「限界集落」に住む女性が、折にふれ書き綴ったエッセーをまとめました。
森、川、けもの、パソコン、外国語、そして愛すべき家族と友人たち。料理の達人である著者の周辺では、静かで退屈な田舎暮らしとは無縁の、にぎやかな日常が繰り広げられています。元気になりたい人必読!
<本文より>
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「あのね。男の人たちは酒を飲んで騒げばいいけれど、女の人や子供たちには食べ物のほうがいいのよ。それにお祭りに赤飯がないのはおかしいわよ。戸数分、パックに入れて配るわ」
「また、君の料理自慢を見せびらかすのだね」(第1章 たそがれ主婦の独り言 召し上がれ より)
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そして取材があった。大阪から来た記者はあまりにも遠くてびっくりしたようだった。
「すごい所ですね。家がなくなって山道に入ったとき、本当に集落があるのかと思いました。こんなところから<美山旬菜塾>は発信されているのですね」(第2章 パソコン格闘記 一人歩き より)
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私の錆びついた脳細胞は刺激してもなかなか動かなかった。記憶力も落ちていた。毎日帰ると復習と予習をしていったが若い子には勝てなかった。(第3章 ちょい留学 イン ニュージーランドより)
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紋次郎の代わりに、私が吠えた。
「ワン、ワン、ワワン」
サルは一瞬、動きを止めた。(第4章 紋次郎の独り言 あかんたれ より)
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料理の本で手作りの保存食が脚光を浴びて、梅干し、ぬか漬けは毎年特集されるが、実際につける人は少ない。手間がかかるからである。私は三十数年、毎年作り続けている。
「塩と梅干だけは欠かしてはいけない。人間の最低限の生きる力になる」
父はよく言った。(第5章 旬菜エッセイ 寝ずの番 より)
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